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JACP医薬品情報室-80(2024/9/1)

医薬品情報室
80
著者
蔵之介

● 医薬品情報室-80
レクビオ皮下注(脂質異常症改善薬)
2024.9.1

 2023年11月、持続型LDLコレステロール低下siRNA製剤のレクビオ皮下注(一般名:インクリシランナトリウム)が発売されました。希少疾患以外では、初めてのsiRNA製剤になります。初回、3ヵ月後、以降半年に1回の投与でLDL-Cの管理が可能になるので、治療アドヒアランスの向上が期待されます。
 『脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドライン2020』では、「脂質異常症を治療する主たる目的は、脳心血管イベントの抑制であり、それらが原因となる死亡を防ぐことである」とされます。家族性高コレステロール血症は、高LDL-C(低比重リポ蛋白コレステロール)血症、腱黄色腫及び若年性冠動脈硬化症を主徴とする遺伝子疾患。LDL-C高値と心血管イベントの発症には関連が認められており、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の予防のために厳密なLDL-C管理が求められます。高コレステロール血症であれば、スタチンの内服のみで十分ですが、家族性高コレステロール血症の場合はスタチンだけでは不十分で、強力なLDL-C低下作用をもつPCSK9阻害薬の併用が推奨されています。   
 PCSK9(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)は、LDL-Cを取り込む肝細胞上のLDL受容体の分解(リサイクリング)を促進して、LDL-C を調節するタンパク質。PCSK9 阻害薬のレパーサ皮下注〔エボロクマブ(遺伝子組換え)〕は、PCSK9とLDL受容体の結合を阻害する抗体医薬で、血中LDL-Cを低下させます。一方、レクビオが標的とするのは、さらに上流にあるmRNA(メッセンジャーRNA)。核酸医薬(siRNA製剤)は、低分子医薬や抗体医薬に続く、次世代の医薬品として期待されています。国内で発売されているsiRNA製剤は、オンパットロ点滴静注(パチシランナトリウム)、アムヴトラ皮下注(ブトリシランナトリウム)、ギブラーリ皮下注(ギボシランナトリウム)があります。生命のセントラルドグマは、二本鎖のDNA情報を一本鎖のmRNAが転写し、タンパク質に翻訳するというもの。近年、このmRNAを二本鎖のsiRNAが制御する『RNA干渉』という現象が発見され(図)、がん治療などへの応用が期待されています。siRNA(スモール・インターフェアリング:短鎖干渉RNA)製剤のレクビオは肝細胞に取り込まれ、PCSK9を生成する遺伝情報を持つmRNAの分解を促進することで、PCSK9 の発現を低下させます。これにより肝細胞上の LDL 受容体が増加し、LDL の取り込みが促進された結果、血中LDL-Cが劇的に低下します。

医薬品情報局PDF-80