● 医薬品情報室-86
リジュセアミニ点眼液
2025.9.1
2025年4月、近視進行抑制剤リジュセアミニ点眼液(一般名:アトロピン硫酸塩水和物)が発売されました。国内で初めて「近視の進行抑制」の適応を取得した低濃度アトロピン点眼液です。
近視は、主に眼球が前後に伸長することに起因して、網膜の前で像を結ぶ(ピントが合う)屈折状態と定義されます。近くの物(拡散光線)は鮮明に見えますが、遠くの物(平行光線)はぼやけて見えます。小児の視力は発達途上にあり、眼のサイズが小さい幼児期は軽度の遠視(ピントが網膜の後ろ)、成長するに従い眼軸長(レンズから網膜までの距離)が伸びて正視(ピントが網膜面に一致)になります。何らかの原因で眼軸長が過剰に伸展すると、近視になります(図)。近視の多くは6~8歳頃に発症し、15~16歳頃まで進行します。この時期に過度の伸長を抑えることが、近視進行予防の基本となります。
散瞳・調節麻痺薬の1%アトロピン点眼液に高い近視進行抑制効果があることは、以前より知られていました。けれども作用時間が長く、羞明(眩しさ)や近見障害が7~12 日間続き、投与中止後に近視が急激に進行するリバウンド現象のため普及はしませんでした。その後、シンガポールの国立眼科センターで、低濃度(0.01%、0.025%)のアトロピンであるマイオピン点眼液に、近視進行の予防効果があり副作用も許容範囲であることが報告されました。国内では未承認のため医師による個人輸入や院内製剤の形で適応外使用されてきました。アトロピンが近視進行を抑制する作用機序は明らかではありませんが、調節を介するのではなく、網膜や脈絡膜のムスカリン受容体を直接ブロックすることで眼軸長を制御すると考えられています。作用は進行抑制であり、近視を回復させる薬ではありません。また、自己判断で中止すると、急激に近視が進行することがあります。近視の進行が安定化するのは、一般的に10歳代半ば頃とされますが、個人差が大きいため2年間以上、可能ならば思春期終了(17~18歳)までの継続が検討されます。ただし、効果が認められない場合には漫然投与は避けます。用法・用量は、1回1滴、1日1回就寝前に点眼します。シングルユース(1回使い捨て)の製剤で、1本で両眼に点眼が可能です。開封時のプラスチック破片の混入回避のため、最初の1~2滴は捨てます。防腐剤フリーなので、残液は使用せず破棄します。夜間睡眠中に装用し、角膜の形を平坦化して近視や乱視を矯正するオルソケラトロジー(ナイトレンズ)との併用は、点眼後5分以上経過後にレンズを装用するのが望ましいとされています。検査やリジュセアミニ点眼液による副作用も含めて公的医療保険は適用されず、自費診療になります。参考価格は1ヵ月分で税込み4,380円程度とされます。