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一燈照隅-12(2023/04/30)

一燈照隅
12
著者
ランタン次郎

● 一燈照隅-12



4月 「展望」

2023.4.30

新しい年度が始まった。5月になればこの忌々しい新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する人間の鎧も少し軽くなり、ようやく日常生活を取り戻すことができそうだ。とは言え「リモートワーク」「ビデオ通話」「ウェブ会議」に「オンライン授業」それに「マスクの着用」も一部では残りそうだし、新しい生活様式に確実に移行しているのは確かだ。

新型コロナが私達に及ぼした影響は甚だしい。ここにきて3年以上も翻弄されたコロナ問題を別の視点で見ようという動きも出てきている。ただしこれは新型コロナや、感染してご不幸な事になられた方々、また医療介護関係者を軽んじている事ではないことを先に断っておきたい。
「ウィズコロナ」共生という言葉も一次聞こえていた。地球の歴史は46億年、ウイルスを含む微生物の歴史は30億年と言われているが、ホモサピエンスの誕生は今から20万年前である。となれば人類こそが新参者という謙虚さが必要ではないかと話す識者がいる。また良く出る話として100年前に流行したスペイン風邪では世界で約4,000万人、日本でも国内では約45万人、朝鮮半島や台湾など外地では約29万人の方々が亡くなられている。一方、新型コロナによる死者はは世界全体で687万人、うち日本は7万4千人が亡くなられてあの混乱である。当時はいかばかりかと思うが今ほど大きなパニックは起きていないらしい。その理由は当時小さな病原体を捕捉する技術がなかったことが挙げられている。調べてみるとスペイン風邪のウイルスが特定できたのはつい最近1995年に米国の研究所で鳥インフルエンザの変異株であるとようやく確定され、今般の新型コロナは武漢でウイルスが発見されてからわずか一週間で特定された。科学の進歩は目覚ましい。

もう一つ理由とされているのが当時の日本が第一次世界大戦の勝利国として強い経済力をもとに華々しく全世界にデビューする時期と重なり、国民の関心は外に向かっていたことが大きな混乱にならなかった理由のようでもあったという説もある。
これは当時から現代までの情報環境の変化も背景にないだろうか。時代はラジオからテレビそして今はインターネットで情報はあっという間に世間に広がる。その情報も科学的な裏打ちが不十分なものであっても拡散した。
毎日感染者数と死亡者数が発表され「生命か、経済か」の単純な議論で終始していた。医療の現場も翻弄され、医師も看護師も疲弊をつのらせた。薬剤師も頑張ったが、その業務は納得できる中身だったであろうか。
 日本はこの数年で経済の高揚は望めず、国民全体が鬱々とした気分から抜け切れていない。その間、他国が強く前進しているように見える。国内の重要な問題から関心を海外に向けようと言っているわけではない。しかし内なることに汲々として、議論のための議論に終始するくらいなら、そのいくらかのエネルギーは外で待つ人達のために使うことが肝心であろう。それは国内の業界も同じこと。

来年度は医療・介護のダブル改定の年。都道府県は今年度中に第 8 次医療計画( 24 〜 29 年度)を策定する。理念と経営の二択ではなく、医療の実務者としてすべきことをする年度が始まっている。