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JACP医薬品情報室-72(2023/09/15)

JACP医薬品情報室
72
著者
蔵之介

● 医薬品情報室-72
肥満症治療薬(持続型 GLP-1 受容体作動薬)
2023.09.15

 22023年3月、肥満症治療薬のウゴービ皮下注〔一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)〕が承認されました。同一成分薬には、2型糖尿病治療薬のオゼンピック皮下注(週1回投与)とリベルサス錠(1日1回投与)があります。
 『肥満症診療ガイドライン』では、肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積し、BMI(体格指数)が25以上のもの。肥満症とは、BMIが25以上あり、一定の健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風など11の肥満関連疾患)を合併するか、その合併症が予測される場合で医学的に減量を必要とする病態(BMI35以上は、高度肥満)と定義されています。
   脂肪細胞は単なる貯蔵場所ではなく、様々な生理活性物質を分泌していることが明らかになり、肥満症はアンメットニーズの高い疾患になりました。国内では、1992 年に発売された中枢性の食欲抑制作用があるサノレックス錠(一般名:マジンドール)だけで、適応は高度肥満、短期間の使用に限定されます。2013年に承認された膵リパーゼ阻害薬のオブリーン錠(一般名:セチリスタット)は、薬価未収載のまま、2018年に導入元企業に返還されました。2023年2月に、同じ膵リパーゼ阻害薬のアライカプセル(一般名:オルリスタット)が、ダイレクトOTC薬(内臓脂肪減少薬)として承認されました。
 ウゴービは、2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬の副作用(体重減少)を逆手に取って、用量を増やし肥満症治療に応用した製剤です。適応は、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない肥満症になります。固定注射針付きシリンジを注入器にセットしたプレフィルド製品で、名称の「SD」は、Single Dose(単回投与)の頭文字に由来します。脳において GLP-1 受容体を介する食欲調節機構の抑制により、体重減少効果を発揮すると考えられています。日本人を含んだ治験で、10%以上の体重減少効果が報告されました。革新的医薬品を有効かつ安全に使用するための「最適使用推進ガイドライン」の対象品目に指定されているため、「3~4ヵ月間投与しても改善傾向が認められない場合には中止すること」以外にも、投与する上で留意すべき事項などが追加される可能性があります。GLP1 受容体作動薬および GIP/GLP1受容体作動薬を、自由診療でダイエット・美容目的で適応外使用していることに対し、日本糖尿病学会から行わないように注意喚起がなされました。米国では、BMI30以上が肥満とされ、リパーゼ阻害薬(オルリスタット)、中枢性食欲抑制薬(フェンテルミン/トピラマート、ナルトレキソン/ブプロピオン)、GLP-1 受容体作動薬(リラグルチド、セマグルチド)が承認されています。国内では、同じ持続性GIP/GLP-1受容体作動薬のマンジャロ皮下注(一般名:チルゼパチド)が肥満症に対して開発中です。  

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