● 医薬品情報室-89
帯状疱疹ワクチンが定期接種に
2026.2.1
2025年4月、予防接種法に基づく帯状疱疹ワクチンの「定期接種」が始まりました【生涯で1回】。超高齢化により帯状疱疹の発症は増加しており、予防は急務です。対象者は、「65歳(年度末年齢)」と60~64歳でヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の人。5年間の経過措置として、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳、および2025年度に限り100歳以上全員です。
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、初感染として幼児期に水ぼうそう(水痘)を発症。その後、何十年も神経節に潜伏感染し、加齢や基礎疾患などで細胞性免疫が低下すると再活性化。疼痛を伴う皮疹が片側の神経分布に沿って現れます【帯状疱疹】。治癒後も、約2 割に帯状疱疹後神経痛(PHN)を合併し、ときに極めて激烈な痛みを伴います。50歳以上のVZV抗体保有率は、ほぼ100%。発症は、70~79 歳で最も多くなり、80歳までに3人に1人が罹患します。
帯状疱疹ワクチンは、ウイルスを弱毒化した「生ワクチン」と、ウイルス表面蛋白の一部を抗原に、免疫反応を増強するアジュバント(免疫賦活剤)を添加した「不活化ワクチン」〔組換えサブユニット〕があります。生ワクチンは、安価で1回の皮下注射で済む反面、効果持続期間は短く、抗がん剤治療などで免疫機能が低下している人には使えません。不活化ワクチンは、高価で2回の筋肉注射が必要ですが、発症予防効果が高く、10年以上持続します。生ワクチンの副反応は比較的軽微で、局所症状が主です。不活化ワクチンは、注射部位の痛みや倦怠感、筋肉痛などの全身症状が強くでます(1日程度で軽快)。インフルエンザワクチンなど、不活化ワクチン同士は同時接種も可能ですが、注射生ワクチン同士は、27日以上の間隔を空ける必要があります。なお、生ワクチンは、シングリックスより効果が劣るとの理由で、海外では発売中止になりました。
最近、『ネイチャー』誌に掲載された「帯状疱疹ワクチンが認知症を予防する」という論文が注目を集めています。英国ウェールズの大規模研究で、生ワクチン接種後7年間の追跡期間中、認知症の相対リスクが約20%減少し、特に女性で顕著でした。もうひとつはシングリックスとアジュバントを含まないインフルエンザワクチンの比較試験。認知症の発症リスクはシングリックスで18%低下。同じアジュバントを含むRSウイルスワクチンでも29%低下したので、アジュバントの影響が強いと考えられます。認知症リスク低下に関する生ワクチンとシングリックスの直接比較でも、シングリックスに軍配が上がりました。ただし、「健康意識が高い人ほど、ワクチンを接種する」などの交絡バイアスを完全には排除できていません。現時点では、帯状疱疹ワクチンが認知症を予防するとの結論付けは時期尚早であり、本来の目的以外での使用は推奨されていません。

