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一燈照隅-09

一燈照隅
09
著者
ランタン次郎

● 一燈照隅-09

1月「三方よし経営」

2023.1.7

 その昔、海外旅行のお土産にウサギのアイコンで有名な雑誌をドキドキしながら持ち帰ってきた経験のある小生のような方々はここの読者にはいないと思うが、あのウサギのバニーちゃんは豊穣や生命力のシンボルとされ、幸運のお守りにもなっている。

 今年の干支の卯年は芽を出した植物が成長して茎や葉が目に見えて大きく成長する年とされ、また兎は飛び跳ねることから、飛躍の象徴にもなっている。コロナで痛めつけられた日本の企業そして私達の生活も大きく向上する年になって欲しいものだ。
 とは言え新型コロナウイルス感染症に加えてロシアのウクライナ侵攻に国家間の対立や分断の様相が現れ、日本も円安やインフレ懸念、慢性的な人手不足などでもう暫く先が見えない状況が続くことだろう。企業の倒産が目立ち始めたことも大いに気になる。

 さて、そんな不確実な時代と言われている昨今、働くということが喜びでなくなり、生活費を得るための手段となり「やらされ感」が蔓延しているような気がしてならない。ここにきて日本の強みだったものが時代の流れと共に変わってきてはいないだろうか。終身雇用が滅私奉公のような言われ方をし、自分を評価してくれない職場からクリック一つで次の職場へ転職を勧めるサイトが繁盛したり、それに呼応するかのごとく大手企業がジョブ型雇用とやらをアピールし、世の中これからはDXが押し寄せる。何でもかんでも“グローバル・スタンダード”に進んでいるように見えるが、それって日本にとってSDGsなのだろうか。

 ご承知のように日本は世界でも稀にみる「老舗大国」だ。世界には100年以上続いている企業が74,037社あるというが、その中の50.1%の37,085社が日本企業、創業200年以上まで遡っても1位は日本の1,388社で世界の200年企業2,129社の中で65.2%となっている。(2022年9月orbis調査)
 ちなみに日本の最古企業は神社仏閣建築の金剛組で創業578年、酒の須藤本家が1141年、今も美味しい羊羹の虎屋が1526年で薬関係は宇津救命丸は1597年、養命酒が1602年で、資生堂が薬局として1872年に創業している。

 もちろん、その100年の間に消えていった企業もあるだろうが、その存続と消滅を分けたものは何だったのか。ものの本によると、生き残っている企業には経営理念やノウハウとは別に、その仕事をする上での心構え「家訓」のようなものあったようだ。
例えば日本各地で活躍していた近江商人が大事にしていた「買い手よし、売り手よし、世間よし」という考え方もそれである。
その「世間よし」とは自分が受け入れてもらうために、景気の良し悪しや新しい情報を各地域に伝えながら行商して、その地域の住人や同業者に良い影響を与える働きをすることが自分達の仕事が定着することだと身をもって体験したことからこの言葉が出来たようなのだ。行商と言えば置き薬の富山の薬売りも「先用後利」を旨とした商売を今も実践している。両者とも「世の中のためになること」に力を入れており、この考え方は長く続いている企業の多くが前提としている考え方のようだ。つまり長寿企業の共通点は、そこで利益を上げることだけではなく、その地域社会に貢献することで住民との間の信頼関係を得るという両面を備えていた。またそれが良質なサービスの競争力になり、同時に金儲けに暴走する経営を抑制していた。

 そして日本の企業の大半は同族企業だ。同族企業は古臭い企業体質という印象を受けるが、長期的な視点に立った経営や意思決定の早さ、時には常識に捉われない革新的なことをしたり、創業の時からの継続した社員を大切にする気風、そして業界内だけではなく地域へも貢献している例が少なくない。このようなことが実は事業の継続性などの優位性を示し、非同族企業よりも業績面で優れているというデータまであるという。

 質の高い「薬剤師サービス」を提供するためには自分自身が物と心の両面で豊かな生活を送れてこそ、達成感に満ちた良い仕事ができ、また次にすべき社会貢献が見えてくる思うのだがここらで同族薬局の皆さん、ピョンと跳ねてみてはどうだろう。