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カナダ薬剤師会雑誌情報2026/1(jan/feb 2026)

CPJRPC
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著者
山村重雄

Canadian Pharmacists Journal Volume 159 Issue6, Jan/Feb 2026
2026/03/08

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Canadian Pharmacists Journal / Revue des Pharmaciens du Canada
Volume 159 Issue 1
January/February 2026
https://utppublishing.com/toc/cpj/159/1


論説

何が重要か測定する:薬局に特化した質保証の指標(PSQI)の導入。
測定の枠組みと薬剤師の影響力を実証する
Shania Liu, BPharm, PhD, Mina Tadrous, PharmD, MS, PhD, and Ross T. Tsuyuki, BScPharm, PharmD, MSc
https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-2025-1028

 前書き

前回の社説では、質保証の指標の概念と、それが現在および将来の薬局業務に持つ意義について紹介しました。質保証の指標の多くは薬剤師の影響を受け得るものであり、国レベルの臨床実務ガイドラインから容易に導き出せると主張しました。

 私たちの専門職能を発展させるためには、薬剤師によるケアの価値を実証しなければなりません。薬剤師の業務範囲が拡大している、あるいは拡大した州では、薬剤師が医療システムに提供する価値が精査されるので、価値を実証することはこれまで以上に緊急の課題です。例えば、アルバータ州のように臨床サービスの広範な業務範囲と報酬体系を有する管轄区域でさえ、サービスへの資金提供は削減されている(例:薬剤レビューの報酬率は125ドルから100ドルへ、さらに現在は70ドルへと着実に低下)。この減少傾向は臨床サービスの持続可能性と薬剤師が提供できるケアの質を脅かしている。さらに、同様の業務範囲拡大とサービス報酬を求める他専門職団体との競争が、この検証を激化させている。測定可能な成果を通じてケアの価値を実証することが、薬局が臨床サービスを維持するだけでなく拡大する唯一の方法である。これは政策立案者が求めるものであり、薬剤レビュー(そしてあらゆる薬局サービス)の評価が向かうべき進化の方向性である。

 例えば、糖尿病治療薬レビュープログラムの評価における従来のアプローチでは、サービスの利用状況(実施されたレビューの数)を測定することがある。治療推奨件数やフォローアップ受診回数を計上するケースもある。しかしこれらは臨床的に重要な成果と言えるだろうか?我々は否定的である。サービス利用率の測定は単純すぎて、患者アウトカムの有意義な変化に結びつきにくいからだ。代わりに、カナダ糖尿病協会ガイドラインなどの指針に基づく「質保証の指標」の達成度を測定する方が重要だと提案している。これには、以下のような質保証の指標を達成できる患者の割合が含まれる可能性がある:・身体活動に関する個別化された助言の受領・脂質異常症および腎疾患のスクリーニング・スタチンの使用・腎保護のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用・目標A1c値の達成など。

 質保証の指標の測定は、薬剤管理業務を単なる受動的な評価基準(実施されているだけ)から積極的な患者ケア(適切に実施されている)へと、すなわち次の段階へと発展させる重要な機会を薬剤専門職に提供します。実際、多くのガイドラインが推奨する質保証の指標は薬剤師のケアによって影響を受けうる。したがって、我々は「薬剤管理に敏感な品質指標(Pharmacy-Sensitive Quality Indicators)」という概念を導入したい。

 

注:薬剤実務に関連する質保証の指標とは、薬剤師または薬剤チームがその業務範囲内で直接影響を与えるサービスの質と成果を反映する、測定可能なケアの要素である。


薬局に特化した質保証の指標の概念

PSQIの概念は全く新しいものではない。看護学は20年以上前に同様の課題に直面した。当時、米国看護協会(ANA)および後に全米質保証フォーラム(NQF)が、看護活動が患者アウトカムに与える影響を実証しようとしたのである¹⁻⁴。ケアの構造とプロセスをアウトカムに結びつけるドナベディアン・フレームワーク⁵を用い、専門家たちは看護に特化した質保証の指標(NQI)のセットについて合意に達した¹⁻²。この枠組みは現在、世界中の医療の質保証システムに組み込まれており、薬学を含む他職種にとってのモデルとなっている。

 薬局に特化した質保証の指標の確立

薬局における質保証の指標をどのように確立すべきか。我々は以下のアプローチを提案する。第一に、ほとんどの指標は既存の臨床実務ガイドライン(専門家が重要であると合意する介入)から直接導出することができ、その多くは既に薬剤師の実務範囲に該当する質保証のための測定項目を含んでいる。例えば、ガイドラインが特定の行動を推奨し、薬剤師がその実施について訓練を受け権限を有する場合、その活動は合理的に薬局に特異的な質保証の指標(PSQI)と見なすことができる。次に、臨床ガイドラインで直接扱われていない指標については、文献や専門家の合意に基づいて設定できる。最後に、各指標の信頼性、実現可能性、感度を確認するため厳密なパイロットテストを実施し、エビデンスが明確になるのに応じて継続的な見直しを行うべきである。

参考文献6–8を応用し、薬局業務において関連性があり、エビデンスに基づいた測定可能な指標の選定と精緻化を支援する基準を開発した(表1)。

表1 薬局に特化した質保証の指標の提案基準

基準 説明
薬剤師の業務範囲との関連性 薬剤師が直接ケアに影響を与え得る主要領域を反映している
エビデンスまたはガイドラインに基づく 文献およびエビデンスに基づくガイドラインによって裏付けられている
測定可能性 既存データ(例:調剤記録、電子健康記録[EHR])を用いて収集可能
実現可能性と明確性   指標が明確に定義され、分子・分母・データソースが明確である
アウトカム重視 患者、臨床医、政策決定者にとって重要なアウトカムと連動している

 

応用例:糖尿病ケア

PSQIが実際にどのように機能するかを示すため、薬剤師が既に重要な役割を担っている慢性疾患である糖尿病ケアを例に挙げる。カナダ糖尿病協会の臨床実務ガイドライン9やその他の国内ガイドライン文書10には、薬剤師の日常業務に沿った数多くの質保証の指標が含まれている。

これらの指標を総合すると、薬物療法、行動療法、モニタリングを包括する糖尿病ケアを表している。薬剤師は、薬剤管理、教育、処方者との連携を通じて、これらの指標の多くに直接影響を与える理想的な立場にある。

網膜症の眼科検査の実施など、薬剤師の現行では実務範囲外の側面においても、薬剤師は依然として重要な調整役を担っている。すなわち、紹介を促進し、ケアチームの他のメンバーがこれらのガイドラインに基づく評価を確実に実施するよう支援する役割である。

表2は、薬剤師ケアが患者の直接的なアウトカムに及ぼす影響を示す薬局特異的な指標の採用する考え方をまとめ、これらの指標を表1で提案した基準に照合したものである。

ソナベリアン分類 薬局ケアに関連する糖尿病関連の質保証の指標の例  
薬剤師の職能に関連している エビデンス/ガイドライン準拠 測定可能 実現可能で明確 アウトカムに焦点
構造 患者検査データへのアクセス(例:HbA1c、腎機能、脂質プロファイル) V
臨床サービスに専念できる時間を確保できる薬局のスタッフ配置水準 V  
プロセス 糖尿病患者の中で身体活動に関する個別化された助言を受けている人の割合 V
眼科医による散瞳眼底検査または網膜写真の評価を受けた患者の割合 X
年間に1回以上のHbA1c検査を受けた患者の割合 V
年間に少なくとも1回の足部検査を受けた患者の割合 V
心血管または腎臓の併存疾患を有する患者の中で、特定のGLP-1受容体作動薬および/またはSGLT2阻害薬などの心腎保護薬を処方されている患者の割合 V
アウトカム 直近のHbA1cの値が7以上の患者の割合 V
直近のLDL-Cの値が2.0mmol/L以上の患者の割合 V

 

次のステップ

PSQIの推進に向けて、以下の提案をします:

  1. PSQI策定のための全国的な協議ワーキンググループを招集する。参加団体は以下を含む(ただしこれらに限定されない):当事者経験を持つ人々、現場の薬剤師、薬局チェーン、薬剤師専門団体、医療サービス/薬局実務研究者、データサイエンティスト、実施科学者、医療政策立案者など多様な代表者で構成する。
  2. デルファイ法を用いてPSQIに関する合意形成を図る。まず、医療費の主要な要因となる最も負担の大きい慢性疾患(心血管疾患、2型糖尿病、筋骨格系疾患、腎臓病、呼吸器疾患)に焦点を当てる。
  3. PSQIを広く普及させる。これには、PSQIに関する公衆協議や関係者協議の実施、ならびに薬剤師がPSQIを達成する方法を教える教育モジュールを通じた普及が含まれる。
  4. PSQIを追跡するためのデータシステムと介入策(監査とフィードバックの仕組みなど)を開発する。

 看護分野では、質保証の指標を追跡する実績あるデータシステムが既に存在する。オンタリオ州登録看護師協会の「報告・評価のための看護品質指標(NQuIRE)」システムは、看護に特化した質保証の指標に関するデータを収集・報告し、継続的改善と政策整合を可能にしている(https://nquire.rnao.ca/)。薬局にも同様の基盤——PSQIデータを収集・分析・活用し、測定可能な改善を示すための全国的な枠組み——が必要である。

普及促進のため、本論説に続くブリーフィングノートと付随するインフォグラフィックを開発しました:
https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-2025-1028-Ed-Brief

結論 
 要約すると、PSQIは薬剤師が患者ケアにもたらす価値を測定し実証するための不可欠なツールである。しかし、薬局ケアが有意義な臨床アウトカムに与える影響を実証する枠組みがなければ、アルバータ州のように薬剤師の業務範囲が広い地域でさえ、苦労して築き上げた臨床能力と勢いを失うリスクがある。したがってPSQIは、高品質な薬剤ベースの臨床サービスの提供を維持するだけでなく、最終的には業務範囲を拡大するために不可欠である。これは、アクセス可能で効率的、かつ成果重視の医療に対する政府の優先事項と公衆の期待に沿うものである。

 我々は、薬剤実践と患者ケアを推進するため、PSQIを開発・採用する全国的な薬剤専門職団体間の連携を提案する。

 

目次 
論説
 重要な指標の測定:薬局特異的品質指標(PSQI)の導入。薬剤師の影響力を測定・実証する枠組み

  Measuring what matters: Introducing pharmacy-sensitive quality indicators
(PSQIs). A framework to measure and demonstrate pharmacist impact
 Shania Liu, Mina Tadrous, Ross T. Tsuyuki
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-2025-1028-Ed-Brief

 重要なものを測定する:薬局感受性品質指標(PSQI)-ブリーフィングノート
 
Measuring what matters: Pharmacy-sensitive quality indicators (PSQIs) – Briefing Note
 Shania Liu, Mina Tadrous, Ross T. Tsuyuki
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-2025-1028-Ed-Brief

 薬剤テクニシャンの可能性を解き放つ:カナダ医療における全範囲活用の障壁への対応
 
Unlocking the potential of pharmacy technicians: Addressing barriers to full scope utilization in Canadian health care:
 Tej J. Galani, Varsha J. Galani
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-13-81349

 学部薬学学生の研究経験——双方に利益をもたらす状況
 
Undergraduate pharmacy student research experience—a win-win situation
 Ryan R. D. Chan, Katelyn Halpape
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-13-80856

 先住民コミュニティにおける薬剤安全:課題と介入策
 
Medication safety in Indigenous communities: Challenges and interventions
 Samir Kanji, Al-Amin Ahamed, Jaris Swidrovich
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-25-0073

 

研究室から
 カナダ安全な医薬品使用実践研究所:安全情報からの共有学習 
 Institute for Safe Medication Practices Canada: Shared learning from safety bulletins
 Dorothy Tscheng, Ambika Sharma, Sylvia Hyland
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-2025-1029


研究と臨床
 StaffWISEプロジェクト第1部:文献における燃え尽き症候群、人員配置、患者安全の関連性を探る
 
StaffWISE project part 1: Exploring the connection between burnout, staffing, and patient safety in the literature
 Andrea Bishop, Beverley Zwicker, Ben Rans, Tessa Bulmer, Candis Lepage
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-13-83187

 StaffWISEプロジェクト第2部:ノバスコシア州における薬局実務環境の問題点を探る
 
StaffWISE project Part 2: Exploring pharmacy practice environment issues in Nova Scotia
 Andrea Bishop, Beverley Zwicker, Ben Rans, Tessa Bulmer
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-13-83191

 麻疹:再燃する脅威と予防における薬剤師の役割
 Measles: A resurgent threat and the role of pharmacists in prevention
 Fawziah Marra, Roxane Carr
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-25-0104

 オンタリオ州への新規移住者におけるワクチン教育と接種促進における薬剤師の役割の活用
 Leveraging the role of pharmacists in vaccine education and uptake among newcomers to Ontario
 Rochelle Spears, Caitlin Ford, Madison Fullerton, Hui Di Wang, Brent E. Faught
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-13-80866

 薬局実践におけるメンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)研修:研修前後の調査研究
 Mental health first aid (MHFA) training in pharmacy practice: A pre- and post-MHFA training survey study
 Christine Leong, Clarisse Romera, Dana Turcotte, Lauren Kelly
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-25-0032

 地域薬局ケアクリニックを訪れる人々はどのようなサービスを求めているのか?
 What services do people seek when they visit a community pharmacy care clinic?
 Yazid N. Al Hamarneh, Darius A. Ramrattan, Ross T. Tsuyuki, Karen W. Sullivan, Bo Pan, Scot H. Simpson
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-25-0029

 カナダ・ブリティッシュコロンビア州における2SLGBTQ+コミュニティへのケア提供に関する薬剤師の経験
 Pharmacists’ experiences providing care to 2SLGBTQ+ communities in British Columbia, Canada
 Lillian Pei Chun Chen, Courtney Nicole Ng, Mel Tsai, Reema Mariam Abdoulrezzak, Sara Hiebert, Alex Tang, Tristan Lai
 https://utppublishing.com/doi/10.3138/cpj-25-0019