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一燈照隅-10

一燈照隅
10
著者
ランタン次郎

● 一燈照隅-10

2月「ラ・ラ・ラ人間」

2023.2.28

あのペロペロはその後どうなったのかわからないが、イギリスの一般大衆新聞ガーディアンでも「Wave of ‘sushi terrorism’ grips Japan’s restaurant world」(日本の外食産業を襲った『寿司テロ』の波)」として紹介されるなど、日本人でもまさかと思うような嫌なニュースとして広がった。これは昨年の安倍元総理の事件の意味する事とは天地の差こそあれ、間違いなく衝撃的な出来事には違いなかった。

日本人はこんなことをしない国民だと信じていたのに、どうしちゃったのだろう。この事件に対して「このような行為は今までだって無かったわけではないだろうけども、昔は悪いことはコッソリとやったものだ」とコメンテーターは言っていた。確かに小生も小さい頃、悪さもしたが、コソコソやったものだ。しかし、同類の事件を起こした「バイトテロ」のアルバイト店員も然り、件の「寿司テロ」の少年たちの動機も〝他者から認められたい〟〝自分を価値ある存在として認めたい〟という自己顕示欲あるいは承認欲求の表れではないかと言われている。
しかし、どちらの欲求もこんな行動のためにあるものではない。自分の夢や生きた証に不可欠な情動のはずである。では何が理由で彼らはあのような行動をしてしまったのだろうか。

話は飛ぶが、先日小生はこれなくしては生きてはいけないほど大好きなオンライン注文で有る商品を購入した。ポストにあった不在票をもとに、手配をしたがモノが手元に届かない。そこで通販会社に問い合わせた。なんと電話して30分もしないうちに配送担当者が飛んできた。その彼女は直ぐに集合住宅の各戸をノックして誤送されていないか確認して回った。嫌な表情は一つとしてなく一生懸命そのもの。その後には本社の窓口からも電話がかかり、その丁寧さは尋常ではない。感動ものだった。結局原因は宅配BOXの誤作動というこちらの設備のトラブルだったが、その後どうなりましたか、とフォローアップも忘れていない。

彼らのそのような行為の背景には自分の仕事に対する誇りがあるからだ。顧客から素晴らしい行為として認められる。それが彼らの承認欲求を満たし、さらなる仕事への原動力になるのだ。

日本の仕組みの多くは関係者の内なる気持ちが息づき進化し、それが日本の価値として表出し世界から高い評価を受けている。

日本の将来はどの業種もあらゆる場面にAIが入ってくるのは必死だ。しかしAIには持てない「感情」「想像」「人と関わることで生まれる経験」などは、人間にしかない領域だ。事件を起こした彼らにはこの領域がどこかに飛んで行ってしまったのかあるいは足りなかった。もう子供でもないのにとても残念でイタい。

私達にはお互いの気持ちを瞬時に感じて適切に行動する能力がある。これを鈍らせてはいけない。自己顕示欲は「能動的」で承認欲求は「受動的」と言われる。DXが始まるこれからの時代にそんな定説も少し立ち止まって考えてみるのもこれからの人間の知恵だと思うがいかがだろうか。