● 医薬品情報室-91
アップニークミニ点眼液(ミュラー筋作用・眼瞼挙上点眼薬)
2026.6.1
2026年5月、「後天性眼瞼下垂」の改善効果がある国内初の点眼薬、アップニークミニ点眼液(一般名:オキシメタゾリン塩酸塩)が発売されました。
眼瞼下垂(がんけん・かすい)は、何らかの原因で片目または両目の上まぶた(上眼瞼)が垂れ下がる状態。「瞼が重くて視野が狭い」「上の方が見えにくい」だけでなく、常に眉を引き上げるため、慢性的な頭痛や肩凝り、眼精疲労などを訴えます。また、「額のシワが深くなる」「老けて見える」「眠そう」など、外見上の問題もあります。生れつき瞼を持ち上げる挙筋が弱い「先天性眼瞼下垂」と、加齢やハード・コンタクトレンズの長期使用により上眼瞼挙筋腱膜が弛緩した「後天性眼瞼下垂(アクワイアード・ブレファロ・プトーシス)」があります。
上眼瞼の挙上には、瞼の裏側にあるメインの上眼瞼挙筋(動眼神経支配)と、サブのミュラー筋(交感神経支配)、瞼の縁にある硬い芯のような瞼板(けんばん)、瞼板と筋を繋ぐ挙筋腱膜(きょきんけんまく)が関与します。上眼瞼挙筋は意識的に動かせる随意筋ですが、平滑筋であるミュラー筋は不随意筋。交感神経支配のアドレナリン受容体は、「αが収縮、βが弛緩」に働きます。眼瞼下垂に対し最も確実な治療は、伸びた挙筋腱膜を縫い縮める「外科手術」。しかし、手術には術後の腫れが引き、普段通りの見た目に戻るまでの「ダウンタイム」があります(約2週間)。アップニークⓇは、ミュラー筋に存在する「αアドレナリン受容体」に作用する交感神経作動薬です。眼瞼下垂の改善効果は、MRD
〔マージン・リフレックス・ディスタンス:瞳孔の中心から眼瞼縁(まつ毛の生え際)までの距離〕で評価します(MRD—1は上瞼、MRD—2は下瞼までの距離)。1日1回の点眼で、5~15分後から効果が発現し、MRD—1はベースラインから1mmほど、有意に改善(リフトアップ)し、8時間以上効果が持続しました。
『切らずに、1滴でパッチリ目に』などの宣伝広告で、美容目的で使用される恐れがあり、日本眼科学会は、適正使用を呼びかけています。眼科専門医に受診し、眼瞼下垂の原因として、脳卒中など重大な疾患が隠れていないか。心血管系疾患における血圧や脈拍数の変動、狭隅角患者の急性緑内障発作リスクなどをスクリーニングします。相互作用として、エフピーやアジレクトなどモノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤との併用で、急激な血圧上昇を招く恐れがあります。米国RVLファーマシューティカルズ社(美容医療市場で驚異的な売上を達成後、経営破綻?)からの導入です。参天製薬は、保険適用外(自由診療)で承認という道を選びました。同一成分を含有する薬に、耳鼻科で鼻詰まり、眼科で充血改善に繁用されたナシビン点鼻・点眼薬0.05%があります(現在は、販売中止)。スイッチOTC薬に、点鼻薬のナシビンMスプレー(血管収縮薬)があります。インターネット上では、「点鼻薬で代用」などの誤情報もあるようです。0.1%未満の濃度では薬効が十分でなく、点鼻薬を眼に使用することは危険です。製剤は、保存剤を含まない「1回使い切りタイプ」。開封時の容器破片除去のため、最初の1~2 滴は捨てます(計算上、1本6滴入)。薬液が鼻や口などに流れないよう、点眼後は1~5分間、瞼を閉じて、涙嚢部(目頭のやや鼻より)を指先で軽く押さえます。自由診療なので、クリニックにより値段は異なると思いますが、参考小売価格は1箱4,890円。なお、一時的な対症療法薬であり、眼瞼下垂を根本的に治す治療薬ではないことに留意します。

